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debsy ni-3

いつまでかかるか分からない説

いつまでかかるか分からない説教じみた言葉を,三津は静かに聞いている。

 

 

『こいつが素直で良かった。』

 

 

そんな事言われる筋合い無いと突っぱねられるかと思ったが,三津は瞳を揺らしながら耳を傾けてくれた。

 

 

「私今生きてますけど?」瘦小腿香港

 

 

「だが心此処にあらず。

人間は辛い事や悲しい事に囚われる生き物だ。

嫌な事程忘れられん。だからと言って,そこに立ち尽くしたままではその苦しみに食い潰されるぞ。」

 

 

木枯らしが吹き抜けて,ピンと張った空気の中で斎藤には三津の息遣いも,心音までも聞こえそうだった。

 

 

『こいつは導いてやらんといかん。』

 

 

心が癒えない中で,漸く掴まり立ちが出来たようなもの。

一人じゃ何も出来ない赤ん坊と同じ。

 

 

まだ自分で踏み出す事を知らない。

だから手をとって,その手を引いて,前に前に歩かせないと。

明るい方へ連れ出してやらないと。

 

 

「ただ泣き喚いて誰かを呼んで,助けてもらえばいいものを。泣くどころか無邪気に笑って手のかからない良い子でいようとする。

全く赤子らしくない。」

 

 

「赤子?斎藤さん何言ってるかさっぱり。」

 

 

「俺も,平気だと思いながら過ごしていたが,自分で思うほど立ち直れていなかった

新選組に入るまで虚無感は拭えなかった。

だが今は居場所が出来て,道が開けた。

何の為にこの身を尽くすか,俺は見つけた。

次はお前が見つける番だ。前を向け。」

 

 

『それにしても……。なんて言う間抜け面だ。』

 

 

垂れ下がった眉に,しょぼしょぼとして泣きそうな目。うっすら開いた唇。

 

 

『それだけ真剣に受け止めてると言う事か。』

 

 

「私……この先どうしたらいいんですかねぇ……。」

 

 

「さぁな。」

 

 

「え!?こんだけ真面目に語っといてさぁなって!!

 

 

「何が起こるか分からん事に不安になっても仕方なかろう。

何かあればその時考えればいい。

その時一番いい答えが見つかるだろう。流れに身を委ねるのも一つの手だ。」

 

 

『あ,そっか。今悩んだって起こってない出来事に答えは出なくて当たり前か。

どうなるか分からんけど,成るように成るよねっ!』

 

 

「正解があるとも限らん。そろそろ帰るぞ。」

 

 

斎藤は立ち上がり着物の土を払うと三津の荷物を取り,歩き出した。

 

 

「はいっ!」

 

 

笑顔で隣りに並んだ三津の存在を,斎藤はしっかりと感じた。今年も残るところあと僅か。

新年を迎える準備に追われ,たえも三津も大忙し。

 

 

「ほら,今のうちから掃除しといて下さいね?

任せたら任せたで全然捗らないんですから!

お布団も晴れた日には必ず日光に当てて下さい!」

 

 

右手にはたき,左手に雑巾。頭には姐さん被りでごろごろしている隊士達の前に立ちはだかった。

 

 

「可愛い顔してお袋みたいな事言ってくれるなお三津ぅっ!」

 

 

声がしたと思ったら三津の視界は真っ暗闇に支配され,息苦しさと圧迫感に襲われた。

 

 

「わわっ!原田さん!」

 

 

正面から覆い被さるように原田が抱きしめたのだ。

 

 

「お三津,女ってのはなしおらしく黙って男に尽くすもんだぜ?

そんな口うるさくなっちゃあ可愛げがねぇって。」

 

 

「ありゃそうなんですか?

原田さんの好みにそぐわなくてすみません。

私忙しいんですけど何かご用ですか?」

 

 

腕の中でもぞもぞ身じろいでがっちりした胸板を押し返す。

そしてにっこりと笑って小首を傾げた。

 

 

大した用じゃなきゃはたきで叩いてやると無言の圧力をかけた。

 

 

「おぉ言うようになったじゃねぇか……

用件はあれだ,土方さんが呼んでるってだけだ。」

 

 

「え!?それ先に言って下さいよ!!

 

 

三津は原田を押しのけて一目散に土方の部屋へ駆け出した。

 

 

『遅いって怒られるの私やのに~!』

 

 

バタバタと派手な足音を立てて急いで来たんだと主張しながら参上。

 

 

「失礼しますっ!!

 

 

戸を開け放てばやっぱり不機嫌な土方とバッチリ目が合う。

 

 

『やっぱり怒ってる。』

 

 

土方は黙ったまま,ちょいちょいと人差し指だけで三津を呼び寄せた。

 

 

おずおず傍に寄って正座をした瞬間,

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