「なるほどな。単なる性癖やなかったんやな。」
「ただの変態やないからな。」
そう言ってにぃっと口角を上げたのを赤禰は呆れ顔で笑った。
その夜なかなか寝付けない入江は小さく息を吐いた。瘦小腿香港
「眠れませんか?」
まだ寝付けずにいた三津が入江の方に顔を向けた。
「三津も起きとったそ?」
「はい,久しぶり寝付きが悪いです。」
多分昼間の出来事のせいだろうなと入江は思った。
「一緒に寝る?」
入江は文の真似をしてちらっと掛け布団を捲った。それに三津がくすっと笑った。やっぱり入って来る訳ないかと入江は少し残念に思った。
「何か考え事ですか?」
こんなに遅くまで起きてるのは珍しい。何か悩み事でもあるなら聞きますと入江の方へ体も向けた。
「三津に拒まれたらどうしよって思ったら寝られん。」
「よっぽどの事がない限り九一さんは大丈夫ですよ。」
心配し過ぎと笑う三津の頬に手を伸ばした。
「触れるのも抱きしめるのも大丈夫?」
「散々してきたやないですか。」
無理なら引っ叩くなり突き飛ばすなりして拒絶してるとまた笑った。頬に添えられた手を払い除ける事もせずに笑った。
「そうやな口づけも何回もしちょるもんな。」
添えた手の親指を唇に押し当ててその指を今度は自分の唇に押し当てた。
「いいですよ?言いたいことはっきり言っても。」
珍しく遠慮していると感じてそう聞いてみた。すると嫌いにならんでねと前置きをして深い溜息を吐いた。
「抱きたい。」
「うん,薄々そんな気はしてました。でも一応小五郎さんも九一さんも営む以外ならって同じ条件なんやしそこは守ってもらわんとなぁ。」
「待って何その条件私知らん。」
思わず起き上がってしまったじゃないか。
「あれ?あの時盗み聞きしてたんやないんですか?」
三津はこの前高杉を叩きのめした後,桂と井戸の前で二人きりでいた時の会話をてっきり全部聞かれてたもんだと思っていた。
「そこ知らん!何でそうなった?」
「小五郎さんが私との関係は何がどこまで許されるか分からへんって言うから決めたんですよ。ただそれは九一さんも同じ条件ですって。」
「ちょっとはよ言って?」
入江はすぐさま三津の布団に入り込んだ。
「営み以外いいんやな?やっぱり私の方が有利や。」
入江は三津を腕の中に閉じ込めた。華奢でいても女性特有の柔らかさに一気に気持ちが丸くなる。
「私はこれでも充分やけぇ。」
禁欲生活の賜物も伊達じゃない。この程度で自分の欲望が抑えられなくなる馬鹿でもない。
だから大丈夫,安心しておやすみよと三津の背中を撫でてやる。
「ホンマや。入江さんの心音落ち着いてる。」
吉田は余裕ないってかなり早鐘を打っていたのを思い出した。入江は逆でいつも通りの速度で脈を打っている。
「当たり前や今落ち着いとるんやけぇ。」
「眠れそうですか?」
「うん,大丈夫そう。ありがとう。」
入江は三津のおでこに自分のおでこを引っ付けておやすみと目を閉じた。
赤禰に時間を割いてくれと頼まれて,その日三津は二人で阿弥陀寺を出た。
赤禰は何処へ行くとも言わず,三津も何処へ行くの?とも聞かなかった。
阿弥陀寺を出る時にセツが赤禰に酒の入った竹筒と頼まれてたヤツよと花を渡してたのを見て察しはついていた。
目的地に着いた時,三津はあぁやっぱりと目を細めた。
「宮城さん今日はお客さん連れて来た。最近うちに来た新しい家族や。」
家族と紹介してもらった三津は墓石に頭を下げた。
「初めまして三津と申します。」
「上から見てくれとる?ええ子が来てくれた。」
赤禰は花を手向けて酒を供えた。そして二人で手を合わせた。
「……武人さん以外にも誰か来てはるんですね。」